プリーツ・プリーズの服が美しく見える状態は「吊られている時」だと思う。
天井に整然と並ぶ箱からハンガーラックを吊り、自由にレイアウトができる仕組みをつくった。世界で多店舗展開するプリーツ・プリーズにとって、各国で同一の素材を用いた店舗表現は、時に困難を極める。地域によって入手できる素材や建材に限りがあるからだ。それを逆手に取り、服を吊るための装置だけを考案し、壁や床材は現地で調達しやすい素材を使用して、地域性を取り入れる大らかさを提案した。箱は、カバーを外せばハンガーラックを差し込める機構になっていて、天井に一定の間隔で取り付ければ、どこでも服が吊れるようになる。また箱は、必ずしも現地で製作する必要はない。1拠点で大量に生産し、輸出する手段を選べば製作コストも抑えられる。これは「土地があって、お店をつくる」従来のプロセスからの解放を見据えており、床と天井さえあれば、世界中どこでもプリーツ・プリーズのお店を生み出すことができるモバイルストアの原型で、短期間であらゆる場所にプリーツ・プリーズを届けられるシステムのデザインである。
何よりも、プリーツ・プリーズの服がもっとも美しく映える状態は、世界中の人々が「身に纏った時」だと思う。
2017
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : 荒木文雄