大阪・中之島、リーガロイヤルホテル内にあるアンティークショップ「PISA」。リーガロイヤルホテル前身の新大阪ホテルが開業したのは1935年。「ホテルの中に街を」のコンセプトから欧米のブランドをそろえた大型のショッピングゾーンが完成し、世界の一流ブティックのあるパリの「Palais Royal」にちなみ「パレロイヤル」と名付けられた。1973年、ハイジュエリー、プレステージウォッチ、アンティーク、美術品など国内外の逸品を取りそろえ、上質な時間、空間の中でショッピングを楽しめる特別な場所として「PISA」は誕生した。我々は、これらの重厚な歴史やブランドストーリー、そして「水の街、中之島」というロケーションを頼りに、現代における上質な空間体験をつくりたいと考えた。ハイジュエリー、プレステージウォッチ、アンティーク、美術品を扱う場に加え、より豊かな時間を過ごしてもらうためのサロンとバーを新たに設け、それらを象徴的なゲートでつないだ。くぐる度に感じるシーンの移ろいは、まるで邸宅の中を歩いているかのような、ゆったりとした気持ちをもたらしてくれる。接客のために新たに設えたBARでは、より深いコミュニケーションが生まれ、お酒を楽しみながらお気に入りの品をじっくりと選ぶことができる。壁面を飾るワインボトルのレリーフは、錫の街、大阪の歴史的背景から錫箔でコーティングされ、鈍く光を拡散し上質な雰囲気を醸す。外壁や柱は、ガラスとタイルの異素材で水面の反射を表現。アンティークゾーンのカーペットは、中之島を取り囲む水面をモチーフに、PISAのアルファベットをパターン状に織り込み、現代的な解釈で表している。意識を変える空間をつなぐゲート、歴史や商品に呼応する素材、細部へのこだわり、それらが一体となり、上質な空間と時間が編み込まれていく。
2020
クライアント : ピサ
写真 : 荒木文雄