MOMENT

この店舗は中国・西安市のショッピングモールにある。敷地の一部が屋外に面しており、路面店舗のような佇まいで、イッセイミヤケの4つのブランド(ISSEY MIYAKE / PLEATS PLEASE / me / BAO BAO)が展開されている。天井高が4メートルある恵まれた環境であるが、あえて2.4mまで下げて、4ブランドそれぞれの頭上に大きな天井開口を設けた。1つの天井開口に1つのブランドを配置して、壁などの仕切りを用いずに、4ブランドを緩やかに領域分けしている。そして頭上に大きく開いた開口は、見えない間仕切りでありながら、各ブランドのディスプレイスペースとなっている。一般的なディスプレイスペースの多くは、ショーウィンドウのように”店頭”にあるが、それを”頭上”に置き換えることにより、自由で大胆なディスプレイ表現を促すスペースをとした。特にイッセイミヤケのプロモーションディスプレイは軽快な演出が多く、空中での披露は相性が良いし売場面積を圧迫することも無い。天井開口の内部は、どのようなディスプレイデザインにも対応できるように、光幕照明で明るさを均一に保ち、あらかじめ搭載したバトンで吊り式のディスプレイを容易にし、側面はシートグラフィックの貼付け・剥離が可能な材質にするなど、舞台装置のような機能を完備した。天井内のディスプレイは遠くからは見えないため、来店者は興味と好奇心を持って近づいてゆく。それが回遊を高める仕掛けとなって、結果的に4ブランドすべての体験につながっていく。一般的なショーウィンドウは”空っぽ”にしておくことは許されないが、頭上のディスプレイスペースは、たとえ”空っぽ”でも、光を孕んだトップライトように大らかな店内風景を醸し出してくれる。強くアピールしたい商品がある時にだけディスプレイを行うことで、年間を通して余計な製作物を減らすことにもつながるだろう。「もっとも目に留まるという理由でショーウィンドウが店頭にある」従来の当たり前を再考・再構築し、店舗を長持ちさせる運用の仕組みをデザインした。

イッセイミヤケ 西安

2022
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : Jonathan Leijonhufvud