大地や溶岩等、躍動する自然物が服づくりのインスピレーションと知り、その着眼点と深い思考、独創的な製作過程に魅了されたことが始まりで、以前から店舗素材の要であった鉄を用い、服の背景に自然現象を発生させる店舗デザインに挑んだ。鉄の表面が空気に触れ、酸素に反応して生成する酸化皮膜に着目し、年月が経た鉄板をバーナーで加熱した。鉄の表面温度が高くなるに連れて酸素結合が進行し、酸化皮膜の厚みが増す。そこへ入射する光(波長)の反射・干渉によって、色づいたような錯覚を覚える。実験を繰り返しながら服との相性を探り、限られた加熱時間で浮かび上がる「青」を引き出すことにした。主に壁面に並列した鉄板は、見る角度によって光を帯びたような、あたかも自発光しているような「見えるはずのない青」を、インスピレーションを可視化するように、服の背景に一瞬だけ披露する。
2019
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : 荒木文雄