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BAO BAO ISSEY MIYAKE1号店が銀座に誕生してから5年が経過し、店舗デザインが果たす役割のひとつであった認知度向上から、高級感を高めるあらたな局面への進化が求められた。単純明快な構造で成り立つものほど、高い技術に裏付けされているように、シンプルな三角ピースの集合でつくられたバッグがまさにそれであり、人の手による丁寧な仕事の過程、いわばスピリットを空間に練り込むことができるか?が、この店舗における刺激的な試みとなった。クライアントと議論を重ねる中で手にした槌目の素材サンプルが基点となり、人の手が加わった素材を用いた空間づくりが最適解とされ、手作業で鎚起された鉄板で店舗全体を覆い尽くすこととなった。表面に理想的な歪みと確かな手仕事の痕跡を滲ませることや、矯正が容易といった観点からアルミニウム材を選定し、1枚1枚丁寧に鍛金した。作業時に止む無く付いた手仕事の証である表層の微細な傷や曇りはそのまま残し、商品の動きと色彩をうっすらと鈍く映り込ませた。3mmに及ぶ板厚も、目には見えない深さを知覚させ、空間全体に重厚さを満たしてくれる。来店者の身体を包み込む、この質感の存在を高めるために、明快な平面・立面にこだわり、空間を定義づける床・壁・天井の構成要素を必要最小限の線数に削ぎ落としている。雑味が無くクリアな空間の中に、底から涌き上がるように感じられる手仕事の力強さが、次のBAO BAO ISSEY MIYAKEのアイデンティティを表現している。

BAO BAO ISSEY MIYAKE Tsuchime

2015
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : 荒木文雄