与えられた敷地は、店舗同士の隙間に存在する小道。聞けば、お客にとって売場からエスカレーターへ向かう「近道」で、通行人も多いという。このややネガティブともとれる稀な立地をポジティブに解釈すると、「お客を誘い入れるための過剰な演出は不要で、必要なのは、通過する人が立ち止まりたくなる仕掛けづくり」である。我々は、通り抜けられる気軽さを維持しながら、小道沿いの長い壁に、BAO BAO ISSEY MIYAKEの三角ピースを用いて大胆なグラフィックパターンと長い棚を設えた。三角ピースのパターンは小道の入口と出口で白から黒へとグラデーション状に変化する。白と黒が入り混じる二面的な背景は、同じ商品でも置く場所によって印象を変えられ、一本動線の単調さも解消できると考えた。何気なく通り抜ける人たちが、その気付きに足を止めて長居してくれるように、反対面には境界壁を兼ねる大きなベンチを設えた。
「通路をお店」に「通過を買い物」に変化させた。
2012
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : MOMENT