BAO BAO ISSEY MIYAKEの店舗は、手仕事の確かさと上質さを伝えるため、主に槌目板を用いている。日本の伝統的な金工技法の一つ"鎚起”に着目し、1枚1枚丁寧に鍛金したアルミ材で空間を覆い、重厚さの中で色彩豊かな商品を引き立ててきた。この店舗は、従来に比べて広く、天井も高いことから、新たに舞台装置の概念を加え、店舗表現のさらなる広がりを目指すことにした。商品を支えるパーツ(棚やフック、ハンガー)の殆どを着脱可能な機構にし、常にディスプレイに変化をつけられるシステムを開発。パーツは10数種に及び、商品を美しく見せることができるよう、商品ごとにデザインしている。例えば、バッグの持ち手をホールドするパーツは、棚裏のレールに装着できるようにし、左右の微細な位置調節にも応える。バッグスタンドを空間に溶け込ませることで、商品がより際立つ効果を期待できる。誰にでも簡単にパーツを組み替え、拡張させられるシステムで、スピーディーに中身を変化できる様子は、まるでスマートフォンにアプリをインストールするような感覚に近い。新しい形の商品に対応して新しいパーツが生まれ、ディスプレイが変化し、空間は持続的に新しい状態を保つことができる。商品とパーツの変化が空間の変化となり、大規模改装のコストを必要としない持続的なビジネスモデルとなる。商品と呼応しながら、変わらないもの(伝統)と変わるもの(最新)が共存する、舞台のような自由な場となる。
2020
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : 荒木文雄