MOMENT

"Ageing Gracefully"

世界遺産・三池炭鉱の煙突や建物に使われていた100年を超える古煉瓦。それを再利用して建てられた築65年の米蔵を、地方創生を目的としたカフェへと改修する計画。建物の構造体である侘びた風合いの木梁をできる限り残したいと考え、天井には採光や排煙の法的基準を満たす最大限の開口を設けた。半端に顔をのぞかせる木梁の表情が空間の特徴的なアクセントとなっている。このカフェならではの魅力は、60紙に渡る多様なジャンルの新聞を自由に閲覧できること。壁に残した丸太を活用し、新聞を一目で見渡せるようにした。新聞ホルダーは空間との相性を考慮して木製で製作し、手に取りやすく戻しやすいデザインとすることで、来店者が躊躇なく手を伸ばせるよう配慮している。また、カウンター席では新聞を無理なく広げられるようテーブルに十分な奥行きを持たせた。厨房の店員との適度な距離を保つ役割も担っている。入口に設けた大きな窓は、店内の様子を外から見渡せるように設計され、入店の敷居を低くし、気軽に訪れやすい雰囲気をつくり出している。一方で、店内からは外の景色が額縁で切り取られた絵画のように映り、空間に広がりと趣を添える。存在していた空間の質を改変せず、過去の時間を今へと滑らかにつなげ、歴史の息づかいが感じられるように整えた。高い天井や蔵としてのひと間がもたらす、会話や食器の反響音は“心地よいノイズ”となって、贅沢な居心地をつくりだしていく。

ROOTH 2-3-3

2018
クライアント : 株式会社 Be The One
写真 : 荒木文雄