MOMENT

"Small parts. Big change"

空間は、完成した瞬間から静かに時間を重ねていく。壁や床が傷み、素材が経年していくのは避けられない。しかし空間が古びても、その中で展開される「陳列」は、常に新しくあり続けることができる。そんな考えからこのショップの設計は出発した。この空間では、商品を掛けるための“五線譜”のような水平の構造体だけを恒常的に設えた。その他の什器はすべて可変的な“治具(ジグ)”とし、商品に応じて設計・製作。フックの位置も自由に調整でき、組み合わせ次第で毎回異なる陳列表現を生み出すことができる。新たな商品が登場するたびに、それに最適な治具を設計すれば、空間そのものに手を加えずとも陳列はいつでも最新の状態を保つことができる。まるでマーケットのように新鮮さは更新され続ける。スマートフォンを思い浮かべてほしい。本体は時間とともに古びるが、アプリを更新すれば機能や体験は常に最新にアップデートされる。この空間も同様に、“更新可能な構造”として設計されている。色彩豊かなプリーツ・プリーズ雑貨が、まるで宙を漂う音符のように軽やかなリズムを描く。時間とともに古くなるという宿命と、常に新しくあるという可能性を、ひとつの空間の中に共存させる試みでもある。

プリーツ プリーズ イッセイミヤケ 成田空港

2015
クライアント : 株式会社イッセイミヤケ
写真 : 荒木文雄